埼玉森林インストラクター会Forest Instructor Saitama

コラム

カタクリのコラム
かたくりもムササビも〜身近な自然とのふれあい
text by 鴨下 知子

ウォームビズで温暖化防止、との掛け声も吹き飛ぶような厳しい寒さもようやくおさまり、小鳥たちのさえずる季節がやってきました。春を告げる花たちとの出会いがうれしい毎日。私の働く工房のそばに、カタクリの群生地があります。今年は冬が寒かったのに、昨年よりも数日早く咲き始めました。
ここ数年、芽出しの頃から観察を始め、1つの株のつぼみが花開くまで記録することを続けています。この群生地では、例年3月初旬地上に芽を出し、3月20日前後に咲き始め、見頃となるのが3月末頃。毎年たくさんの人が朝早くから訪れます。
きれいな花を見てもらおうと、地元の人たちが草刈りなどの整備をしてくれていますが、特に大きく宣伝しているわけでもなく、のんびりと自由に鑑賞したり写真を撮ったりできる雰囲気の所です。でもそのせいか、花を踏み荒らして群生地の真ん中へ入ったり、寝そべってカメラを構えたり、掘り取って帰ろうとするようなマナー違反の人も時々見かけます。その場に遭遇しなければ止めることも出来ないので、毎年何か予防策がないかしら…と考えてしまいます。
先日、工房のホームページを見たという三重県の方から電話がありました。山でムササビの赤ちゃんを保護したが育て方がわからず、インターネットで調べてたどりついたとのこと。実は2年前、私が通勤途中の林道でムササビの赤ちゃんを拾い、ほんの数日間世話したことを掲載していたのでした。その方には、ウチよりもっと詳しいホームページがあるのでそちらを紹介して、電話を切りました。
林道を車で走っていると、時々動物に出会います。野ウサギやイノシシが目の前を横切ることもありましたが、ムササビには出会うのも触るのも初めてで、ペットにはない「獣のにおい」を直に感じた、本当に貴重な体験でした。
カタクリもムササビも、昔から人里近くで暮らしている普通の生きものだと思います。今は私たちの暮らしがあまりにも自然から離れ、生きものとの距離感をつかみづらい時代になりました。やみくもに保護するだけでなく、もっと利用したりふれあう中でこそ、大切に思う心が芽生えるのではないでしょうか。けれども、それには知識と知恵が必要です。まずは自分が、もっと実体験を積んでいかなければと思っています。

カタクリのつぼみ。春は間近。


きまま工房木楽里ホームページ⇒ http://www.k-kirari.co.jp ※ブログ(カタクリ日記連載中)