埼玉森林インストラクター会
2015年9月6日

埼玉森林インストラクター会研修会



報告・木口 明浩

 ■日時:平成27年9月6日(日)
 ■天候:曇り→小雨
 ■参加者:9名

 鬼押出し浅間園内の登山道と自然遊歩道(自然研究コース)を散策した。溶岩上の植物を観察することで、乾燥した場所から始まる乾性遷移の現況を肌で感じることができた。
 先ず、目についたのは、日当たりのよいところの木本で、アカマツ、コメツツジ、ミヤマホツツジ、ゴヨウマツ等であった。草本では、オヤマリンドウ、アキノキリンソウ、ハハコグサ、ハンゴンソウ等の初秋の花たちが咲き誇っていた。
 小群落を形成しているのは、クロマメノキだ。残っている果実はほんの僅かで夏の終わりを告げており、黒熟した豆のような実は、文字通りで、直径が10mm程、やや酸味があるものの同じ仲間であるブルーベリーによく似ている。
 コケモモの実は、これよりさらに小さく直径僅か7mm程だ。ほぼ酸味しか感じないが、赤い実というのは、それだけで魅きつける力があると思った。
 一方、この赤に対抗するかのような純白の実をつけていたのは、シラタマノキだった。いかにもやわらかそうなその球は、深緑色の葉の上で、よりいっそう映えて存在感を放っていた。齧るとサロメチールのような芳香が口の中に広がり、一度味わうと忘れることはない。
 これらツツジ科の樹木が、強酸性土壌である火山灰地でも生育が可能なのは空中窒素を固定できる特性をもつからである。すなわち、菌根菌と共生関係を結び、水分と無機養分をもらう代わりに光合成で作った有機質養分を菌根菌に提供するという相互補完の関係にあるからだ。
 また、樹高が低く細かい針状の葉をもつこと、常緑であるこという特徴は、高地での寒冷、乾燥という厳しい気象条件に適応した結果でもある。しかしながら、こうした共通形態も、細部にわたってよく観察してみると、葉の向き、色、形、にそれぞれ違いがある。
 同じ生存戦略をもちながら、種によって個性が出るのはおもしろいと思った。
 登山道に入っていくと、ヤシャブシやリョウブの群落が発達しており、ところどころにシラカンバ、カラマツ、ダケカンバ、カエデ類が混じっていた。林床には、ハクサンシャクナゲ、ガンコウラン、ミネヤナギなどの低木、亜低木類がみられ、ツガザクラ、ミネズオウ、クロマメノキ、コケモモ、シラタマノキなどがコケ類や地衣類とともにカーペット状に広がって、溶岩の一部を包み隠していた。

 鬼押出しは、1783年(天明3年)の大噴火から230年あまりの歳月を経て森林を形成しつつある。植物のしたたかな生存戦略とその生命力に驚くが、広域でみれば、まだ遷移の途中相にあり、極相に至るまでには、途方もない年月がかかるということも思い知った。
 この日の浅間山は、噴火警戒レベル2で、小康を保っていたが、今なお、歴とした活火山であり、いつ噴火するともわからない状態にある。火山による攪乱と植物の再生は、幾度となく繰り返してきたに違いない。そして、この不毛とも思える戦いは、これからも続いていくのだろうと想像した。


クロマメノキ
コケモモ

ガンコウラン
シラタマノキ


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