埼玉森林インストラクター会
2003年8月13日

草木染め2


クサギで草木染め〜実編〜
text by 秋山進


 書名は忘れたが、染物の本を読んでいたら、こんな文章が目に留まった。
「天然のもので、青い色が出せる染料は2つしかない」
 そのひとつは言わずと知れた「藍」。そしてもうひとつが「クサギ」なのだそうだ。クサギ…。日当たりのより荒地などでいくらでも目にすることができる木だ。そんな普通の木が、選ばれし2つのうちのひとつだなんて…。クサギを見る目が少し変わった。

 そんなことを知った後日、クサギで染物をしようという話が持ち上がった。1度目はその葉を使った草木染め。葉を使った場合は青には染まらない。青く染めるのには実が必要だ。そして今回、ちょうど実が手に入る時期にあわせて、第2回目の“クサギ染め”を行なうことになった。いよいよ2つしか出せない青をだせる。そう思ったら、前回以上にやる気が出てきた。

クサギの実は青い宝石

 まずは、何はさておき、原料のクサギの実集めだ。今回も森林インストラクターの森で実を集めた。この時はちょうど地ごしらえの時期にあたり、わざわざ樹上の実を落とさなくても、木ごと切り倒してしまえば、簡単に、大量にむしりとることができる。
 早速、作業日にクサギの実を集めることにした。これまでは単に雑木としか思っていなかったクサギが、作物に見えてきた。この日の作業は、「地ごしらえ」ではなく「収穫」になった。切り倒したクサギの実を、とりあえずは額がついたままビニール袋へ。夢中で集めたら、大きなビニール袋3つ分の実が収穫できた。


クサギの実。一粒ずつガクからもいでいく。

 その後は、実だけをきれいに選別する作業がまっている。この作業は家に持ち帰って行なった。新聞紙を広げ、黙々と額と実を分けていく。袋から出してはむしりを繰り返す。だんだんと内職をしているような気分になる。

 それにしてもあらためて見ると、クサギの実はきれいだ。熟れ具合によって、色むらはあるが、ちょうど良く熟れているものなど、その深い青みといい艶といい、丸い形といい、「青い宝石」と呼びたくなる。少し臭い(癖のあるゴマのようなにおいとでも言うべきか)のが難点だが…。


3時間の成果。すでに達成感が…。

 そして、においと格闘しつつ、実をむしること3時間。ビニール袋2つ分のクサギは、箱いっぱいになった。壮観な眺めだ。すでに何かを成し遂げた感じがしてしまう。が、しかし本番はこれから。

クサギは青より出でて、青より…

 後日、それぞれ材料を持ち寄って、メンバーが集まった。いよいよクサギ染めに挑戦だ。
夏に葉で染めた際は、布の下準備を当日に行なったため、十分に乾燥させることができず、上手く染めることができない原因となった。そこで今回は事前に豆汁に浸して十分乾かしたものを準備した。


型紙を切るのも案外難しい。
よく考えて切らないと形にならない。

 最初の作業は、布に染め模様をつけるための型紙作り。柿渋で染めた型紙を思い思いの形に切る。その型紙を染める布に重ね、金網をかぶせ、その上からのりをこすり付けるように塗る。そして再び干す。のりが塗られた場所だけ染まらずに、染めた後にのりを洗い落とせば、切り抜いた形に模様が残る仕組みだ。

 のりがあらかた乾いてきた頃に、いよいよ青い宝石・クサギの実を煮始める。今回は水1リットルに対して、クサギの実210gを使用。煮詰めるに従い、青く染まる煮汁。きれいな青だ。そしてころあいを見計らって、布を投入。


実はすり潰してお湯に入れる。
完成した染液。きれいな青緑色。


鉄染媒液(左)、アルミ染媒液(右)に浸す。

 煮ている間に染媒を準備する。今回も2種類の染媒を用意。鉄には前回同様、鉄釘を酢で煮た液、アルミには焼き明礬を使用した。染媒の違いによる微妙な染まり具合の差を調べてみたい。煮詰めた布を、鍋から出して、染媒に浸す。そして、その結果は…。

 藍のような濃い青には遠く及ばないが、きれいな青に染まっている(一番最後の写真をご覧あれ)。染媒による違いも微妙に現れた(アルミ染媒液の方が鉄染媒液に比べて色が濃く染まる)。今回の挑戦はまずまず満足いく結果を収めることができたといえる。


型染めも成功。左は「草木染」の文字。
右はもみじマーク。

 思いつく範囲で反省点を挙げるとすれば、煮詰めたクサギの量が少なかったことだ。また、今回は時間の都合から1度しか染めなかったが、1度染めて乾かした後に、2度染めをすればもう少し結果も変わってくるだろう。また、後日わかってきたことだが、数ヶ月経つと青色が退色し、薄黄色くなってしまった。色を定着させるための方法もあるはず。今後の課題だ。

 しかし、今回はあくまで上手く染まる条件を見つけるためのテストだからこれでいい。まだクサギの実はたっぷりと残っている。またの機会に、たっぷり残ったクサギの実をたっぷりと使って、クサギ染めに挑戦しよう。そして、クサギ染めの青い布を使って埼玉森林インストラクター会のグッズを作ろう。そんな夢まで膨らんだ。その日を待つように、今日も我が家の冷凍庫には青い宝石が眠っている。


見事に染め上がった布。
左は線媒液なし。中央が鉄染媒液、右がアルミ染媒液で染めたもの。

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